働き方改革関連法:「年次有給休暇の取得義務化」対応
2019年4月より
働き方改革関連法が順次施行され、
早くも2か月が経過しました。
そのひとつ、
年5日の年次有給休暇の取得義務化について
エン・ジャパンが実施した実態調査によると、
・認知度は9割以上
・7割が取得促進をしている
・課題は人手不足、業務の偏り
だったとのこと。(2019年5月8日)
「存在は知っているから 取得の促進もしているけれど、 やりたくてもできない現実がある!怒」 そんな姿が見えてきます。 実際の現場では、 対応している・していないの 二極化が進んでいるように感じていますが、 おさらいとして、もしくは、 確認のきっかけとなればと思い、 あらためて制度をながめていきます。
制度の概要
年10日以上の年次有給休暇が付与される 労働者を雇用する企業は、 例外なく対応しなければなりません。
①対象者 「法定の年休が10日以上付与されるすべての労働者」 管理監督者や、 有期雇用労働者もすべて対象です。 なお、この10日は当年度分のみで 繰り越し分は含みません。
②対象期間 「労働者ごとの年休付与日(基準日)から数えて1年以内」 この義務化は、 法施行日(2019年4月)以降に 付与した年休から対象となります。 ③時季指定の方法 「使用者は、労働者から意見を徴収して時季指定を行う」 労働者の意見を徴収することは 「義務」ですが、 その意見を尊重するかどうかは 「努めなければならない」です。
一方的な指定はできませんが、 必ずしも労働者が希望する日に 取得させる義務まではありません。
④時季指定義務から除外されるもの 「労働者が自ら取得した日数、 あるいは、労使協定で取得時期を定めて 与えた日数(計画年休)については時季指定する必要がない」 自ら取得した年休には、 〇前年度繰越分や、 〇半日単位の年休はカウントできますが、
×時間単位年休や、 ×特別休暇はカウントできません。
企業が最低限行うべき対応
まずは以下の項目について、 社内の対応状況を確認していきましょう。
✔年5日の年休付与(義務) 2019年4月以降、 年間5日の年休を取得していない従業員に対し 時季指定による付与を行い、 確実に休暇を与えることが必要です。
✔年次有給休暇管理簿の作成(義務) 時季、日数および基準日を 労働者ごとに明らかにします。 当該年休を与えた期間中、 および当該期間の満了後3年間の 保存義務があります。
✔就業規則への規定(義務) 休暇に関する事項は、 就業規則の絶対的必要記載事項となるため 時季指定を実施する場合は記載が必要です。
✔計画的付与制度導入の検討 業務に支障のない時季に年休を 取得させることができる等のメリットあり。 導入の際には、労使協定の締結が必要となります。
✔有給取得申請のルーチン整備 有休の申請のしやすさと、 取得推進はやはり相関します。 いつまでにどのような手続きを取ればいいのか等 申請しやすいルールの整備をしましょう。
労働者1人につき、1罪となる罰則規定
罰則による違反は、 対象となる労働者1人につき1罪として取り扱われます。 また、使用者が時季指定したにもかかわらず、 労働者がこれに従わなかった場合でも、 法違反を問われることになることに注意が必要です。 ✔労働者の請求する時季に所定の年休を与えなかった場合: 6か月以下の懲役または30万以下の罰金 ✔年5日の年休を取得させなかった場合: 30万円以下の罰金 ✔使用者による時季指定を行う場合において、 就業規則へ規定されていない場合: 30万円以下の罰金
有給?有休?年休?
「ところで、本当は何が正しいの?」と、 感じている方も多いのではないでしょうか。 結論から申しますと、 「どちらでもいい」です。 正式名称は、「年次有給休暇」ですが、 正式略称は、特にありません。 ちなみに、労働法の本などでは 「年休」と略されていることが多いように思います。
まとめ
日本の有休消化率は5割を切っており、 世界的に見ても非常に低いことが知られています。
今回の改正趣旨は、 ×使用者が年5日の年休について時季指定をすること ではなく、
〇各労働者に年5日の年休を確実に取得させること です。
例えば、 夏季休暇や年末年始休暇などの特別休暇を廃止して 有給に振り返ることも改正の趣旨に反することになりますし、 有給休暇を買い上げる制度に至っては原則違法になります。
パート、アルバイトの方などは 有休があることを知らないケースも多いと思いますが 労働者本人が知っているか知らないかは関係なく、 条件に該当すれば当然に対象となります。 もしまだ対応が不十分である場合には、 優先度を上げて、できるだけ早急に仕組みを整備しましょう!
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