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「休憩」のルールと労務リスク

休憩時間は、単にお昼を食べたり、 銀行へ行く用事を片付けたりするための時間なのではなく、 「労働者が労務から離れ、 心身の回復を図るための時間」だと定義をされています。 働き方改革で長時間労働が取り沙汰される中、 休憩時間にしわ寄せが及んでいる・・ そんな声も聞こえてきますが、 労務管理上のリスクになりかねませんので、 ルールにのっとった運用がされているのかどうか この機会に確認をしましょう。



労働基準法のルール


労働基準法では、労働時間が、 6時間超8時間以下の場合には最低45分、 8時間超の場合には最低60分の休憩を、 与えなければいけないと定められています。 休憩の与え方については、 「3原則」という要件があります。 途中付与の原則    休憩時間は、労働時間の途中となる時間帯に  与える必要があります。  労働時間のはじまり、または、  終わりの時間帯に付与することはできません。  15分や30分などでの分割付与も可能です。 一斉付与の原則  休憩時間は、全ての労働者に一斉に与える必要があります。  ただし、労使協定を締結している場合や、  特定の事業に従事している場合は対象外となります。 自由利用の原則 休憩時間は、労働者の自由に利用させる必要があります。  ただし、一部例外もあります。(警察官や児童養護施設等)  なお、いくら自由利用とは言え、飲酒の禁止や、  他の従業員の休憩の妨害となる行為を禁止するなど  職場の安全管理、規律管理上の制限をすることは可能ですし、  休憩時間に会社施設内での自由が保障されれば、  外出を許可制にすることも可能です。

違反した場合は6か月以下の懲役、または、 30万円以下の罰金に処される可能性があります。 休憩時間の長さについては、 最低限度は決められていますが、 最長限度はありません。 労働時間が長い飲食店などでは、 長期の休憩時間を設けることもあります。 中抜け時間が生じた場合、 その開始と終了の時間を報告させる等により 休憩時間として扱い、労働者のニーズに応じ、 始業終業時刻の繰り上げ、繰り下げの対応も可能です。 管理監督者については適用されませんが、 パートやアルバイトは同様に適用されます。 なお、所定労働時間が8時間以下だったとしても 残業により8時間を超えた場合には、 45分ではなく60分の休憩を 与える必要があることに注意してください。



考えられる労使トラブル



冒頭でも触れたとおり、 残業規制により昼休みを返上して働いてしまうパターンや、 休憩時間中の電話番、来客対応、 ランチミーティングへの参加などは、 使用者からの拘束(労働時間)だと評価される可能性があります。 労働時間となれば、賃金の支払いが必要となりますので、 未払い賃金のリスクを抱えることになります。 運用上、または施策上、 そのような対応を行う必要がある場合には、 当番制を取る、強制参加にしないなどの対策が有効です。



まとめ

休憩の付与は労働基準法に定められた義務になりますが、 規定されているのは最低限の事項です。 お昼休憩中に仮眠の時間を設ける「シエスタ」、 意図的に珈琲を飲む「カフェインナップ」等の 施策を戦略的に取り入れ活用している企業も増えています。 法的な問題点をクリアすることはもちろんですが、 本来の趣旨にのっとった運用が行われているか確認を行い、 社員任せではない業務環境の整備を行いましょう。

WRITTEN BY
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松永祐子

社会保険労務士/働き方最適化コンサルタント|ワークデザイン社労士事務所代表。社内に専門スタッフを持たない企業様の頼れるパートナーとして、同じ未来を見つめ、寄り添う姿勢を大切に活動。人事畑一筋15年の経験から、全体像を把握し、組織の本質的な課題解決を行うコンサルティングスキルが強み。

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